前回はボンネットから登場した猫、ジジが犬(チワワ)4匹と暮らすストーリーをお届けしました。

ボンネットから現れた子猫はうちへやってきて、チワワ4匹との生活を体験、そして私の転居に付き合ってくれ、最終的にまた実家での生活に戻ってきたジジ。しかし後輩猫が続々と増えてしまい、馴れ合いの嫌いなジジはマイホームながらストレスを抱えて生活していたことでしょう。ジジが一人で過ごせるよう部屋を隔離したり一緒の時間を作ってはいても、やはり一人っ子とは違います。
今回はジジちゃんの突然のお別れについて書いていきます。書いてる私も辛いです。
だけど私にとってはペットとは必ずお別れが来るもの。
そこも含めて飼い主の責任だと思うので、悲しいことは悲しいと受け止めてジジのストーリーとして残しておきたいのです。

通院嫌いの猫、ワクチンへ連れていく
例年のワクチンの通知が届きました。外に出ない家猫なのでワクチンしなくてもいいかな~、と思いながらも健康診断もかねて行ってました。と言っても毎年ではなかったんですけど……。
健康診断も必要と思いながらも、毎年受けているわけではないんです。今まで何回か受けたけど特に病気もなく健康の太鼓判を押されるだけ、日常の様子でも変わったことはなく、本当に病院へ行く機会がない猫でした。他の猫とじゃれあいや喧嘩もしないので怪我をすぐこともありませんでしたし。
この日も、健康診断と一緒にワクチンしてもらおう、という程度のつもりで通院することに。

こういう時って猫は賢くて、飼い主が何か普段と違う空気を醸し出すとするりと隠れちゃうんですよね。ジジは特にそこが賢い!
なので気づかれぬようにそっとジジを個室へ閉じ込め、ジジの好きなカリカリでご機嫌を取り、足元でゴロゴロしてるのをよしよしして。
ふわ~っと、さっと、暴れぬ間に洗濯ネットで捕獲!
怒ってましたがネットに入ってしまえば後は簡単にキャリーケースへ。
複数猫にワクチンを受けさせようと思うと、全部一緒に連れて行くほうが行く回数が少なくていいんだけど、一人で行くには二匹が限界……ということで、ついでにあともう一匹だけ連れていきます。
勿論キャリーケースは1つに1匹。
ジジは他の猫に比べて通院が難しくなかなか捕まらないうえに入らない、隙を見ては逃げ出す達人です。洗濯ネットで何とか捕まえてキャリーへ。もう入った途端から「アオーン!」「ニャオーン!」と大声で不満を訴えてました。

車内でも院内でもずっと鳴いていた
しかも連れて行ったもう1匹もずっと鳴く猫で、お互いに鳴くことで余計に鳴きだすという相性の悪い組み合わせになってしまった……と後悔するも、まあ、いつものことなので。
ジジが病院嫌いで鳴くのも仕方ないことと思って「ごめんねー、でも年に1回くらいはねー」と声をかけながら病院へ。
病院の待合室でも、うちの2匹だけニャオニャオ激しく泣き喚いておりました。結構響くんですよね。しかも大体つられて他の猫まで鳴いちゃう。
しかし幸いにもこの時は他に猫がいなかったのでうちのだけが鳴いてました。
すぐに呼ばれるだろうから、と肩身の狭いを思いをしつつ待っていたら――

突然「ギャー!」という変な鳴き方をして…
「ニャオーン!」と大きな声で鳴いていると……突然「ギャーッ!」みたいな変な鳴き方をしたんです。
えっ?
と思ってキャリーケースの中のジジを見たら手を突っ張って横になってる。
ジジちゃん? おーい?
と声をかけても反応はなく、
もしかして緊張しすぎて気絶した?
くらいに軽く考えてました。しかし放っとくわけにはいかないし、ナースに声をかけよう……と思っているうちに呼ばれて診察室へ。
この時、変な鳴き方をしてから数秒とたっていません。まさに呼ばれる寸前に動かなくなったんです。

ひとまず診察室へ入って
なんだか突然変な鳴き方をして動かなくなっちゃったんですが……。
え!?
お預かりします!
とナースも慌てて猫をキャリーケースから出し――それでも動かない――すぐに洗濯ネットから出して抱えて、獣医とともに処置室へ運ばれて行きました。
それでも私は、ジジが緊張して一瞬気絶しただけかな、なんて軽く思っていました。
ところが、待てど待てど帰ってこない。一緒に連れて行ったもう1匹は不安そうに鳴き続ける。
途中でナースがやってきて、嘔吐はなかったか、カルテで持病の確認や今日の様子なんかも聞きました。
嘔吐はないし、これまでの健康診断でも異常なし、持病無し。今朝もカリカリを食べて満足そうにゴロゴロお腹を見せてました。
だんだんと不安になりながらも、でも病院だし、処置に連れていかれたの早かったし……と思いながらもドキドキ。
そうしていたら、ナースがやってきて「飼い主さんもこちらへどうぞ」と言われて嫌な予感がしました。
すぐに心臓マッサージや人工呼吸を行うも…
もう1匹の猫は診察室へ残したまま、私がナースに連れられて処置室へ。
そこには何やら人工呼吸や心臓マッサージや血管にチューブやらいろいろ処置されているジジが寝ていました。
もうそれを見ただけで涙が堪えられませんでした。
なんで? どうして? なんで急に?
と訳が分からず、なんで?という疑問だけが頭の中を埋め尽くしていました。
顔見知りの獣医さんが二人がかりで心臓マッサージと、人工呼吸……呼吸器というのか、確か手でポンプみたいなのを押していた気がします。
心拍を示す画面みたいなのもあって、心臓マッサージをやめるとやっぱりその波形が弱くなるんです。
ああ、もう駄目だ。
言われてなくても、その状態を見ると嫌でもわかりました。そして何より、ジジより少し前に苦と猫の看取りをしていたから、あの叫び声と手の突っ張り方をみて、もう死んでしまったんだと直感で分かっていたのかもしれません。
処置中、人工呼吸のポンプ?から血が出てきました。確か肺が破裂? 肺から血が出て来てる、と言われたんだったかな。ちょっと覚えてません。
普通、そういう状態になるのって交通事故にあった子が多いんですって。
それを聞いたとき、
あれだけ激しく鳴いてたからなのかな? 鳴きすぎて肺が破裂しちゃったってこと?
なんて、医学のことがわからない私は、頭の中でそんなことを結びつけてしまいました。実際はわかりません。すごく激しく泣いてたけど……というのは獣医に伝えたけど、「それが原因ですね」なんて言われなかったので。
ずっとその光景を見ながら泣いているとナースがティッシュを持って来てくれました。コロナ禍の夏のことで、マスクの中がベチャベチャですよ。
そして確か、5分間でしたでしょうか――
一定時間以上、処置をしても自力で呼吸や心拍が回復しないことから、これ以上は回復は望めないと判断されました。
それは私もわかりました。もうこれ以上続けてもらっても、自力で息を吹き返すことはないだろうと。
だから「もう充分です。ありがとうございます」としゃくりあげながら頭を下げました。
処置をやめた途端に、心臓の動きを示していた波形と数値が弱まっていくのを見ました。
もう自分で心臓を動かすことが出来ない。血流を流すことが出来ない。自力で呼吸が出来ない。
あまりに突然の死でした。
闘病生活はなかった。その日の朝も好きなカリカリを食べてごろごろしていた

その当日と翌日は悲しかったのですが、不思議なことに悲しみは長くは続きませんでした。悲しいんだけど、あまりに突然すぎて追いついていなかったのかもしれません。あるいは悲しくても家にその他大勢の猫たちの世話があったからでしょうか。
でも一番の理由は、闘病生活がなかったことだと思います。
その約二か月前に亡くなった黒猫ちゃんは、たった1年足らずの家猫生活で、その半分の期間を口の痛みや病気に苦しんで過ごしました。もっと何かしてあげられたんじゃないかと後悔が今でもなくなりません。
だけどジジちゃんはその病気の苦しみはなく(多頭飼育のストレスはあったけど)、その日の朝もジジの好きなカリカリを食べて、私の足元にごろごろ転がって、すりすり甘えて、朝はご機嫌に過ごしていました。
それがせめてもの救いでした。





病院側からは可愛いピンクの首輪と棺
それからは病院の方できれいに整えてくれて、首にはピンク色のリボンもつけてくれて、可愛らしい紙製の棺に入れてくれました。
暑い夏の時期でしたから、遺体が傷んでしまわないように先に車を冷やしておいてくださいと言われました。
相当な時間を待ちました。が、ジジちゃんの処置に獣医が二人とナースが付いていたので、他の来院客の皆様にも相当待たせてしまっただろうと思います。申し訳なさもちょっぴり。
だけど動物病院でずっと泣いてる飼い主の姿を見たら、たぶん気づくところはあったんじゃないでしょうか。
私もそういう場面に遭遇したことがあります。動物病院で待っていたら、ずっと泣いている飼い主の方がいたり。車に大きな箱(恐らく棺だったのでしょう)を積む飼い主と見送る獣医とナースがいたり。亡くなったんだな……と察し、私自身も悲しくなって涙ぐむことがありました。

そういう時に思い出すのは、チワワとのお別れのことでした。私にとって初代猫以来の二度目のペットとのお別れがチワワでしたから。
その子も心臓が悪くて咳も酷くなり食欲をなくし、酸素室を導入するべきか、安楽死をするか――長いこと母と悩んで、「もう生きているだけで呼吸が苦しいなんて可哀そうだ、安楽死をしよう」と決意をした翌日に、母の腕の中で亡くなったとのことです。
知人に、「きっと飼い主に安楽死をさせるという選択をさせないように、これ以上飼い主を悲しませないように、自分で旅だったんじゃないかな」と言われてはっとしました。
当時の私はジジちゃんとアパート暮らしでしたから看取りの場にはいませんでしたが、その子が日中寂しくないようにと、仕事中の休憩を長めにもらってなるべく一緒に過ごしていました。食欲がなくても、人間の食べ物でもいいから、食べれるものを食べてもらおうと必死でした。(私は強制給餌はできません)
なので弱っていく姿も毎日見ていただけに悲しさ、辛さは、あの子が亡くなって約5年が経つ今でも消えません。
かなり長いこと待って、ようやくナースが可愛い棺を持って車まで運んでくれました。
車の中で一度棺を開けて中を見ると、まるで眠っているかのようなジジちゃん。首には今までつけたことのない可愛いリボンの首輪をつけて。
病気でもなかったから毛艶もいいし、たっぷりお腹もたるんでるし、ふわふわのまま眠ったジジちゃんがいました。
そこでひとしきり泣きたかったのですが、ナースと獣医が見送るために待ってくれています。
ともあれずっとここにいるわけにはいかないしすぐに家に帰ろうと車を出発させると、ナースと獣医が頭を下げて見送ってくれる姿が見えました。


自宅に連れ帰ってから火葬へ、本当にこれで最後
約二か月前にお別れした黒猫ちゃんは、遺体が傷む前に、せめて綺麗なうちに送ってあげなきゃという焦りの気持ちでその日のうちに火葬へ連れて行きました。
しかし逆に急ぎすぎて、お別れする時間がなかったことを悔やんでいたのです。
ですからジジちゃんはあと一日、一緒に過ごそうと決めました。仕事も休んで、棺に入って眠ってるジジとあと少し一緒に寝ていようと。
暑さ真っ盛りの夏。
いくら冷房のきいた室内と言えども、不安なので保冷剤をたっぷり詰めておきました。しかし冷たすぎたのか、お腹の脂肪がカチコチに固まってしまい、なんだかジジちゃんに申し訳ないことをしてしまった……。
そして恐ろしいことに、
目を離したすきに、別の猫でジジの毛をむしっていた!
羅生門かよ! 綺麗にそこだけハゲになってる!
その猫、よくわかりませんが他の猫の毛をむしる特徴があり……生きてる猫なら当然怒ってやり返すんですが、ジジは眠ってるわけでして……やられるがまま、そこだけきれいに地肌が……恐ろしい。せっかくなので毛はラップに包んで保存して骨壺とともに備えています。

翌日に火葬へ連れて行きました。今までのチワワや黒猫でお世話になっているペット葬儀屋です。ただ人間みたいにいろんなオプションをつけたり立派な式にしようとするので費用はかさむし、ちょっと仰々しいように感じていまして……商売っ気を感じるので、後になってには他の人に聞いて評判のいい別の火葬場へ移ることになります。
せっかく病院から可愛い棺に入れられていたものの、ペット葬儀屋では自社の籠・棺に移さないといけないということで、一番お手頃価格の籠に。他の子たちも籠でした。
遺体の周りにお花を飾って、病院でつけてもらった首輪は燃やさずに、残しておきたくて回収。
そして火葬へ入る前の本当に最後の時。
今までの子たちにしてきたのと同じように、最後にお別れのキスを。
お疲れ様、今までありがとう、を込めて。

火葬後に言われたのが「首?背中?(忘れました)の骨がつながっていたのは珍しい」
骨の回収は葬儀屋さんにお任せしています。飼い主がしてあげたほうがいい、という意見もありますが、我が家ではペットと言えども人間とは違うということで……私自身、お骨を拾うという行為にそれ以外の意味を感じていないというか。
時間がかかるので私はいったん葬儀屋を離れてよそで時間を潰し、お骨回収が終わると骨壺に入ったジジちゃんのお迎えに行きます。
蓋を開けて中を見せてくれます。
その時葬儀屋のお姉さんが、
「首の骨・背骨(どっちか忘れました)がくっついていたんです。珍しいことなんですよ」
と不思議そうに言われていました。
病院では特に指摘されたこともなかったし、運動神経もよく高いところへジャンプもしていたんだけど、どういう意味だったんだろう。
獣医にもその話をすると「そのあたりも先天的に何か持っていたのかもしれない」
その後別の猫の件で動物病院へ行ったとき、火葬の時の骨の話をしました。
やはり獣医からも
「それは猫ちゃんには珍しいです。死んでしまった原因はわからないけど、もしかしたら先天的に何かあったのかもしれませんね」
と言われました。
首・背中の骨の方のレントゲンとか撮ったことないと思います。本当に元気だったというか、体調を崩すことがなかった子なので。
フードが合わず食べては吐き、を繰り返したときに通院したぐらいでしたから。

10歳未満での突然死。私が言っていたのは「死ぬときは苦しまずにパッと逝くんだよ」
まだ10歳にもなってませんでした。最近の猫は20歳越えもいますよね。職場にも20歳越えの猫を飼っているお宅がいます。
約2か月前に黒猫を亡くした時、悲しかった私はジジによく言っていたのです。
たぶんジジちゃんが一番年上だし、病気もないから長生きするかなあ……でも死ぬときは苦しまずに、パッと逝くのよ。苦しまないでね。
と話しかけていました。そりゃもちろん長生きしてほしいけど、病気で苦しむよりはそのほうがいいと思うからです。
だからなのか、本当に、パッと突然逝ってしまいました……。
私があんなことを言ったせいなのかな、という思いと、本当に私の言う通りに一瞬で終わらせてくれたのか、なんて賢く優しい子なんだ、という思いが交錯しています。
でもやっぱり、ジジのこの逝き方はある意味では幸せだったのかも、と思うようにしています。
だって他の子みたいに病気で苦しんでいないのですから。当日の朝だって好きなご飯を食べたんです。きっと本人もわからないうちに死んでしまったんじゃないかしら、と思います。



飼い猫の急死は身近にもいた
他にも猫を多頭飼育している方に話をしたところ、その方もやはり猫が突然死したことがあるというのです。
ジャンプしたら死んだ、と。
きっと脳か心臓だったんじゃないか、と思っているということです。
なんなんでしょうね……人間にも突然死はありますけど、やっぱり生き物ってそういうことがあるんですかね。
二代目猫神様となったジジを振り返って
ボンネットから突然現れた子猫。それまでどうやって生きてきたのか。
ボンネットに猫が入るのは危険なあるあるですし、車のそんな危険な内部で悲惨な状態になる子もいると聞きます。車の修理代だってとんでもないことでしょう。
なんでそんなところに入っちゃうの!と猫のお馬鹿さに悲しくなります。暖かいのでしょうけど猫間で言い伝えてほしいです。車には入るなと。
ジジは家にやってきてからはチワワ4匹に囲まれて育ちましたから、きっと自分は犬だと思っていたんじゃないでしょうか。すっごく身軽な犬。だからチワワとは仲いいけど他の猫には気を許さなかったのでは……。
またジジちゃんは私の転居によく付き合って移動してくれました。可愛かったなあ。
次から次へと後輩猫が増えていったことが、ジジにとってストレスだったでしょう。それは申し訳ない気持ちです。
そして通院が、文字通り「死ぬほど嫌だった」にもかかわらず、ワクチンや健康診断で通院した時には診察台でゴロゴロ言って落ち着いてたんですよ。
いつも獣医に「ゴロゴロ言ってて心臓聞こえないね~」と笑われてました。きっと診察台ではジジちゃんだけが注目を浴びて、みんなが撫でてくれるから嬉しかったのでしょう。ワクチンそのものを嫌がったことはありませんでした。
尻尾がなくて、ほんのちょびっと丸いポンポン見たいな尻尾がついてて、長毛種ではないのに年中冬毛みたいなモフモフした猫。撫でると抜け毛がすごくてブラッシングが追い付かないくらい。

自分よりかなり小さな箱でも躊躇いなく中に入ってぎゅうぎゅう詰めになるのが好きでした。
絶対無理だろうと思うような高い場所にもジャンプして上るチャレンジ精神にあふれた猫でした。
一時期は外にも遊びに行っていたので虫や鼠や鳥を持って帰ったり(その後完全室内飼育に)、室内に侵入したヤモリをおもちゃにしたり……どんな虫も大の苦手な私には地獄の状況でしたが、ジジは猫らしい猫でした。
ジジが猫神様となって1年が過ぎました。この1年間にも猫事件はいろいろ起きている真っ最中です。
これを書いている今日も、二匹の野良猫の避妊去勢手術へ預けているところです。一匹はまだ1歳未満の子猫なので、出来れば里親探しをしたいけど、もし見つからなかったらうちで預かるには多すぎる……と悩んでいるところです。
いつもお世話になっている保護団体に聞いてみたところ、「乳飲み子や怪我・病気の猫は保護するがある程度大きくなった子猫はリリースしている」ということでした。しかしものすごく人懐っこい子猫を、これから寒くなる時期、車の危険もある外の世界に解き放つのは心が苦しい……うーん。
ひとまずジジのストーリーはここまでです。また何か思い出したことがあれば記事にするかもしれません。
ありがとうございました。
そしてジジよ、他の猫を見守っていておくれ。
